森見登美彦×狸谷山不動院トークショーに行ってきた【イベント本編レポート】
読書家というには読書量が少なすぎるわたくしですが、著作のほとんどを本棚に収めている唯一の作家が森見登美彦先生です。わたくし森見先生と同い年でして、同じ時代に京都の大学(京大ではない)にいただけに、京都のクサレ大学生という新たな鉱脈を発掘された時は驚嘆したものでした。映画『ペンギン・ハイウェイ』も素晴らしかったですね。それなのに、これまで森見先生がらみのイベントには縁の薄い日々だったのです。
【イベント情報解禁】
10月7日(土)森見登美彦×狸谷山不動院のイベント情報が解禁です!
詳しくはWEBサイトまで。https://t.co/iwkBI66jX0#狸谷山不動院#森見登美彦
#有頂天家族— 狸谷山不動院 (@tanukidanisan) August 31, 2018
小説の舞台となった場所で森見先生のトークがきける!これは行かねば!と思っていたくせに申込みを忘れ…。自分の不誠実さに打ちひしがれていたのですが、イベント前日に朗報を発見!
【10月7日イベント当日券のお知らせ】お申し込みするか悩んでいた方にお知らせです。イベント当日は当日券を少しながらご準備しております。当日券も10時より本堂横事務所にて受付開始です。
— 狸谷山不動院 (@tanukidanisan) 2018年10月2日
台風も通過したことだし、今度こそ行かねばならぬ。できる限りの早起きをして駆けつけた次第です。
叡山電車一乗寺駅より急な坂道を歩きに歩き、さらに急な階段を250段。会場の狸谷山不動院に到着したのは9時過ぎぐらいだったでしょうか。
とにかくたっくさんのたぬきさんに見守られて歩きました。もう少し心に余裕があればじっくり眺めながら歩くところですが、ゼイゼイと息が上がるほどの道のり。こういう写真を撮ったのは帰り道のことです。道中の模様や境内の様子は別の記事にアップしようかと思います。
整理券無事にゲット!かわいいステッカーやパンフレットもついてた。そして「一乗寺中谷」のランチ100円引き券もついてた!
待ち時間はイベント出店されてる有頂天家族のコラボグッズを眺めたり、お茶をいただいたり。お店の様子や森見ファンの皆さんの佇まいを眺めているだけであっという間に時間が経ちました。
さて、いよいよ開場の時間。「上から失礼しまーす」と軽妙な語り口で誘導してくださった僧侶の方。修験道のお寺だけあって、皆さん声がよく通る。
本堂にてご祈祷、その後いよいよトークショー開始
トークショーの会場は本堂。わたくしは3列目の左側を陣取ることができました。ほどなくして、森見先生がご登場。あんまり静かなので「あれ?」」と思ったのですが、ここは寺院。開創300年記念のイベントであるからして、まずはご祈祷から始まるのでした。ブォ~ブォ~という法螺貝の音色と共に、先程まで陽気に参加者を誘導していた僧侶のみなさんが厳しいお顔で登壇します。護摩焚きをしながらのご祈祷が行われました。修験道のお寺の行事は初めて見たのですが、とても迫力があって神秘的です。
ご祈祷が滞りなく終了し、いよいよトークショー開始。住職さんからご挨拶があり、「撮影、動画はちょっとこれは…著作権の問題が…」と軽く茶番を演じた後(すいません笑)、「ないということで!どんどん撮って、どんどんSNSにアップロードを!」との呼びかけが。よっ太っ腹!場のあたためもお上手!
さて、盛大な拍手とともに改めて森見先生ご登場。住職さんの進行でトークが進みます。壇上には、「有頂天家族2」に登場するおばあちゃんも鎮座。白くてふわふわでちょっと思ってたよりでかい。
初めて間近に見る森見先生、スラッと長身。そして色白美肌。本当にわたくしと同い年なのか?以下、トークの模様をざっくりと書き起こしていきます。
住職:先生の学生の頃のお住まいはどのあたり?
森見:下宿していたのは北白川の別当。病院のそばです。
住職:学生時分に下宿してたら、あのあたりは銀閣寺もあるし、楽しい学生生活だったでしょう。
森見:坂があるので通学が大変でしたね。
住職:狸谷との接点は。
森見:学生のときに思い立って山の中に入って、瓜生山からこう(手振り)、こんなかんじで。一人で何を考えていたかよくわからないけど、鬱屈してたのでとにかく歩いてました。そのうち道に迷いこんでこちらに入り込んだのがはじめてです。
住職:作家になろうという気持ちはそのころは?
森見:いろいろ書いてはいました。
住職:書くのが好きでしたか?
森見:そうですね。できれば小説家になりたいなと。他に何になればいいのかよくわからなかった…。
住職:日本中探してもこんなにたぬきが見られるところはないでしょう。狸谷不動院をはじめてみた感想は?
森見:たぶんびっくりしたんだろうと思うけど、学生の時に何を見たかは全然覚えていないです。有頂天家族を書くときにはいろいろ蘇ったのだろうとは思います。あとから改めてこちらに伺うと、有頂天家族っぽいものがいろいろあり。自分で考えて書いたのだと思っていたけど、その時見たものに影響されたのかなと。たぬきだけじゃなく、七福神の像も。
住職:ここには弁天さんもいますから(笑)。先生の小説とアニメ見させてもらったんです。私自身は京都に生まれ、山に入って30年。はじめはなぜ狸谷という名前なのかと。人に言う時も「えったぬき?」というリアクションだった。それが照れくさかったんだけど、今は先生のおかげで堂々と言える。(一同笑)小説を読むうちに、私もたぬきとちゃうかなと。おしりが最近もぞもぞするし、しっぽ生えてきたんちゃうかと。先生のおかげで本当にたぬきが身近な存在になったんです。先生とお会いするのは3回目ですね。最初は「王様のブランチ(※関東のみの放送)」の撮影の時で、2015年。ここでインタビューして喋ってました。
森見:すごい寒かったのを覚えています。
住職:当時の写真をみたら先生はしっかりマフラーをしておられた。それが第1回。第2回目は下鴨神社で。第3回目が今日。今日はもう少しつっこんでお話を聞きたいと思います。第1回目は上からこられたから、お寺のことはあまりわからなかったかと思います。今日は下から来られた。どうでしたか。
森見:いや、すごいです。あのたくさんのたぬきはいつ頃からあそこにいるんです?
住職:良い質問ですね。実は、自然発生的にたぬきが置かれたんです(どよめき)。お寺からたぬきを置いてと言ったことはない。狸谷という名前だからということにつきると思います。京都はたぬきが魔除けや商売繁盛を祈って置かれたりする。そういうものだから、たぶんいろんなご事情があっても、捨てるに捨てられない。こっそり置きにきはったんですかねえ。
森見:たしかにすごいバラエティ豊かな。ちょっとたぬきじゃないやつもいますよね。こっそりそういうのが紛れ込んでるのもたぬきらしいなと。
住職:置いてくれとか置いてもいいですよということもなく。完全にみなさんのお考えで。
森見:はじめて知りました。
住職:関西は信楽にたぬきの町がありますからずらっと県道に並んでますけど、これだけのたぬきが見られるお寺はそうないかと。話しを戻しまして、先生が学生の時は白川通の別当町にお住まいだった。私も一乗寺の生まれなんですが、あそこは昔からいろんな居酒屋とか食堂がある。先生はお酒は飲まれるんですか?
森見:私はあまり。お付き合い程度です。
住職:京大農学部といえば、向かいにある「ハイライト」。行かれましたか?
森見:何度か。でもボリューミーすぎて…(笑)。すごいですよね。1・2回行くと、ちょっと私には…と笑。もっぱら「コレクション」というお店で明太子スパゲティばかり食べていました。今出川通沿いのもう少し東。農学部からすぐなので入り浸って。明太子スパゲティか、あるいは鶏皮バターライス。鶏皮バターライスもええかげん気持ち悪いですよね(笑)。よっぽどお腹空いた時に。最近はあまり行けてないので、また明太子スパゲティ食べたいですね。家ではあまり食べない。万城目学さんの知り合いが以前コレクションで働いていて、レシピをこんなかんじと教わったんだけど、まだ作ったことない。もはやレシピもわからない。
住職:きっと今日このイベントが終わったら「コレクション」は大行列ですね(笑)。ほかには?
森見:よく御影通りの「ケニア」とか「ひらがな館」とか、非常にスタンダードな。定食も食べられるようなお店です。
住職:学生の時はサークルはやっぱり小説とか?
森見:いやいや、そういう文学っぽいことはしたくなくて。
住職:え?なんでですのん。
森見:小説書くのは一人でやりたかったんですよ。あんまり切磋琢磨したくなくて。あんまりそういう文学的なサークルに入るのは嫌だったから、ライフル射撃部。嘘みたいだけど体育会系です。
住職:あれって集中力で、ちょっとブレるともう駄目ですよね。意外と体力いるっていう話。
森見:僕はあまりなかったです。僕でもできるかなと思ってやったんですけど。一応4年間最後まで。
住職:大会とかは。
森見:まったく。大学生同士の試合はでてましたが、結果はでない。練習もしてなかったから。部室にみんなで自由に書くノートがあって、そこに友達の悪口を書いたりするのをメインの活動に。
住職:そっから執筆活動がはじまったんですね!
森見:そこに文章を書くとみんなが笑ってくれるので。だんだんそういうのを書いて笑ってもらうっていうのをやるようになったから。
住職:そこに書かれるものを友達が笑ってくれるっていうのは、先生が書かれるもののセンスがもうでてたんでしょうね。
森見:完全に内輪ウケでしたけどね。
住職:素朴な質問なんですけど、今回「有頂天家族」に関して言えば、ある程度イメージを持たれて?
森見:自分でもどう書いたらいいのかよくわからないんですよね。こういうのを書こうと思って書くとうまいこといかないこともありますし。こうじゃなかったとか、嘘くさくなっちゃうし。あるいは書いているうちに、それまでは考えていなかったけど、こうすればいいんだってわかることもあるので。
住職:路線やアプローチが変わるんですか。
森見:書くにつれて変わってしまったりっていうのがあるから、だいぶ長いことどうしたらいいんだろうって悩んでいるんですけど、まだわかんないです。いつも行き当たりばったりで無理矢理仕上げてます。
住職:有頂天はすっといけたんですか?
森見:いやー、有頂天は第一部と第二部がありますから、第一部はわりに適当に(笑)。どうなるかわからず書いていたので、行き当たりばったりで。第二部は第一部をふまえて書かないといけないからいろいろ考えたんですが、考えたらうまくいくかというとそれは別で、それぞれ違う苦労をしましたね。第三部は苦労したくないなと。
住職:でました!私たちの口から言うでもなく、先生自ら。ここは拍手ですか?(盛大な拍手)
森見:言わないほうがよかったかな…笑
住職:ある程度構想はできている?
森見:第二部であまり考えすぎて苦しいことになったので、第三部はもうちょっと考えなしに書きたいなと…。考えなしに書いて面白くなるかわからないですけど。
住職:ちまたの噂では第三部の原稿はできあがってて、すでに第四部が。
森見:それはないです。
住職:金庫に入ってるということは。
森見:そうだったらどんなに素晴らしいか!あったら幻冬舎の担当者が奪っていってると思います。
住職:森見先生は…森見先生ですよね?化けてはりませんよね?
森見:化けてないです。イベントのたびに第三部って言葉にだしますけど、成果が伴ってなくて申し訳ない。
住職:まあ間違いないと。あとは時期だけの問題。第一部と第二部はけっこう時間があいてたんですよね。
森見:7年ですね。
住職:第三部は7年以内?でももう3、4年たってる…
森見:そうなんですよね、出版社の方とのいろんな約束もあり、順番もあり、いろいろやってますので…
住職:毎日PCとにらめっこ?執筆は毎日?朝何時くらいからされるんですか。
森見:朝9時くらいからお昼くらいまで。昼からは、書く以外の読まなくてはいけないものを読んだり、雑用とか。あまり長く書けないんですよ。元気な時は書けるんですけど、だいたいお昼すぎくらいになったら文章がうまく書けなくなっていくんで。そうなると潔くあきらめてほかの仕事を。午後、夕方とか夜に書くのが嫌なんですよ。どうしてもやらないといけない時はあるから、しぶしぶやる時もあり。
テキストではうまくお伝えできないんですが、住職さんの優しい京都弁と森見先生の温和な語り口、ほっこりします。第一部が終了し、第二部開始までしばし住職さんのMC。「どこから来られたんですか?」というアンケートを実施すると、北は宮城、南は九州、なんと沖縄から来られた方がいることが判明!森見人気すげぇ~
森見先生をファンが囲む夢の第二部
第二部は抽選で選ばれたイベント参加者が壇上で直接森見先生に質問するという夢のような企画!森見先生がくじを引き、4人が選ばれました。うらやますぃ~~~~。4人の皆さん、嬉しすぎてみんなプルプルしてた。自己紹介によると、森見先生の影響でたぬきが好きになりすぎて大学でたぬきを卒論テーマにした男子。緊張しすぎて先生の隣にいるのに顔が見られない女子。「四畳半~」の頃からずっと森見ファンの落ち着き系男性。たぬきが大好きでアニメ「有頂天家族」のビジュアルにハマったのが本日参加のきっかけという女子。住職の進行により、4人の方が順番に質問していきます。
Q:「有頂天家族」を書く時に、たぬきをテーマにしようとした理由や、このような世界観をどういう時に考えて書こうと思われたのでしょうか。イメージはどういう風にでてきたのでしょうか。
森見:一番最初は、北白川の下宿でたぬきを見かけたのがきっかけですね。たぬきが出てくる話しを書きたいなと思っていて。最初はしばらくアホな大学生の話しを書いてまして。あの文章で書いてると、主人公がぜんぶアレになってしまう(一同笑)。僕としても危機感を抱いていて、いつまでこれをやるんだろうと。できればあの大学生のああいうアホな古風な語り口を温存しつつ、他の世界に広げたいなと思っていた。たぬきを主人公に書きたいなという気持ちとちょうど一致した。たぬきだからアホな古臭い語り口にしても不自然ではないので、じゃあたぬきを語り手にすればいいやと大学生からスライドさせて。発想としては大学生なんですね。でも、たぬきと人間の争いだけだと「平成狸合戦」みたいになるので、もうちょっと違うものを入れたいなと思っていたところに、当時「大日本天狗党絵詞」という漫画がありまして。要するにパクったんですよね。こないだ作者の黒田硫黄さんと対談して謝罪したのでようやく言える。こちらは狸もいるし完全にパクリじゃないだろうと思っていたけど、若干危ういかんじではあったんですけど使わせていただいて。狸だけ、人間だけ、天狗だけの話しではなくてお互いが影響しあってぐるぐるまわっていくっていうのがすごく書きやすかった。そこを思いついたあたりから「書けそうな気がする」と。そんなかんじです。
Q:天満屋っていうのがでてくるんですけど、「きつねのはなし」とか他の小説にもでてくる。狸とか天狗とか、モデルがあってああいうキャラを作ったのかなって。
森見:とくにモデルがいたわけではないですね。大学生が主人公のものは発想のもとになった友達はいるんだけど、有頂天はほとんどそういうモデルがなく、でっちあげというか、その場その場で適当にひねりだしている。天満屋はそういう名前が好きで。あやしい芸人みたいなかんじで天満屋という男というイメージが気に入っていたので。別の小説でも厳密な繋がりがなくても気に入っているものは出すので。
Q:有頂天家族というと面白い表現というイメージがあるんですけど、ああいう文章はどういう風にできていくのか
森見:僕も教えてほしい(笑)。事前に厳密に考えているわけではないので、書ける時には書けるし、書けない時は書けない。理屈でやってないんですよねぇ。だからなんだろう、たぬきっぽい気持ちで書くことですかねぇ。クサレ大学生を書く時はクサレ大学生っぽい気持ちになる。実際は大学生やたぬきではないので、本当は日常でああいう言葉を使っているわけじゃないから、そういう言葉がでてきそうな登場人物になって、言葉の流れを追いかけているといい表現がでてくる。「ペンギン・ハイウェイ」もそうですよね。そうとしか言いようがない。流れででてくるとしか。書けなくなると本当に困っちゃって、理屈でやってないから再現ができない。まったくなんの答えにもなってないな(笑)
Q:主人公の家を下鴨神社にしたのはどうしてですか
森見:ああ~…近所に住んでたんですよね。出町商店街から西にでて、寺町商店街をかなり北に行ったところの地下のマンションに住んでまして。1フロアが全部地下という非常に落ち着く。そこからよく散歩で下鴨神社のほうに行ったりしていたので。たぬきを登場させるっていうことは決まっていたのだけど、いかにもたぬきが出そうな落ち着きそうな場所を考えたら下鴨神社だった。とくに理屈はなく。下鴨神社の糺の森は好きで、古本市も行ってたので、好きな場所だったというのはある。後で下鴨神社の人にたぬきが住んでますって聞いてびっくりしたんですけど、歩いていたときは知らなくて、小説だからいいかと。あとは、たぬきに名前をつけるのは大変なので、それぞれ京都の有名な場所を名字にしてしまえば、いろんな狸の一族の名前がつけやすいなと。下鴨神社についてほとんどちゃんと描いていないにもかかわらず、下鴨家を名乗ってる。我ながらいい発明やなと。こういうイベントしてるのも、下鴨家のお母さんの実家がここだったというそれだけなので、大変ありがたいんですが。
住職:先生は奈良県ご出身ですよね。奈良の観光名所もいっぱいあるんですけど、なぜご出身地じゃなくて京都なのかと。
森見:なんか奈良は書きにくいんですよね。奈良を書こうとすると古代のロマンみたいなものが出てきてしまって。京都はもうちょっとそれが現代に繋がっているというか、昔ながらのものも普通に感じられるんですが、奈良でそこらへんをやると雄大になりすぎてしまって。できれば書けたらいいなと思うんですけど。あと僕がちょうど京都を舞台に書いていた時に万城目学さんが奈良を舞台にした小説を書きはりまして、「これはしばらくあかんわ」と。万城目さんを追いかけて慌てて奈良をおさえるみたいな。当時は若干万城目さんに張り合う気持ちがあって、同じことはできないなと。万城目さんは着実に、大阪を書き、奈良を書き、滋賀を書き。僕が脱出する道をどんどん塞いで、結局僕は京都に閉じ込められた。
住職:じゃあ「有頂天家族3」は奈良へ出張するとかないですか。
森見:そうですねぇ、ごくたまになら。(笑)
Q:森見先生がイメージする偽電気ブランの味とは
森見:えええ…。いやあ、なんか美味しいんやろなって。「夜は短し~」を書いた時に、わかるようなわからないような描写をしたんですけど、あれが精一杯。名前が好きだったという、電気ブランという不思議な名前を使いたかったんで。それをすると、作ってはる人に怒られるかなと思って偽電気ブランという名前を作ったんですけど、明確にイメージはないです。そんな名前のお酒があって不思議な味がしたら面白いだろうなというのもひっくるめて想像なので。具体的な味を言うとすれが偽電気ブランになっちゃうから、ぼかしたほうがいいかもと。
Q:作品がアニメーションになって登場人物が動くのはどういう気持ちですか
森見:不思議なかんじです…。自分の作品は小説だと思っているので、アニメは自分の作品とはちょっと違う気もするし、みているとちょっと恥ずかしくなる時もありますし。キャラもあまりに違うと違うというけど、ある程度の範囲内におさまると文句は言わないし。小説を読んだ人がアニメを見た時に「ぴったり」とか「ここは違う」と思わはるでしょうけど、それと似てるかも。僕の小説は特に文章だけでできているという側面が強いので、京都を舞台にしていても文章抜きにすると再現が難しいと思うから、アニメになったものは違うものっていうかんじがします。アニメになったおかげで楽しい思いをできてありがたいですね。頻繁に本を出しているわけではないのに、大活躍してるように見せかけてもらってありがたいです。ここ7,8年はほんとにアニメに救われてる。寿命を延ばしてもらってるかんじがします。
Q:有頂天家族の矢二郎くんがすごく好きなんですけど、第三部では活躍しますか?
森見:わからない…というか、活躍してくれることを祈ってますね。やってみないとわからないなあ。あまりこのキャラを「このように活躍させないと」と考えすぎると書けなくなっていくんですよ。できるだけみんなに活躍してほしいと思いつつ、あまり決めないでおこうとは最近思いますね。
Q:「夜は短し~」にでてきた韋駄天ごたつを京大出身の父が見たことあると聞いたんですが、モデルがあったのですか?
森見:学園祭でこたつを出して飲んでる人がいたんですよ。担当編集者(京大出身)は入ったことあるんですよね。けっこう伝統としてあるらしい。でも、大学の中をうろちょろするということはなくて、農学部の決まった場所に学園祭になったら出没する。ご覧になったのはそれかもしれないですね。
住職:皆さん、せっかくなんで先生になにかお願いとか。(全員無言)…無茶振りですか?先生、先生はまだ39歳ですよね。この年齢でこの作品というのはあると思うんですけど、いろんな価値観や感性は歳とともに変わってくる。それが執筆活動に影響することはあるんでしょうか。
森見:変わっていくので、それは思いますね。小説を書くのは1人なので、以前はこんなことが書けて、今はこういうことが書けるというのはすごく感じます。ただそこで無理をして今書けないものを書くのは。「夜は短し~」は今書けないですから。同じものを書こうとすると苦しくて。あまり無理して以前書いたものをもう1回やろうとは考えなくて、今やろうと思うことをやろうと。思いのほか変わっていくので。何かが書けなくなれば、新しい何かが書けるようになるし。
住職:先生、自分が書かれたやつは読み返したりするんですか。
森見:どうしてもやむを得ない時にちらっと見るくらいで、できれば読み返したくはない(笑)。美しい思い出にしておきたいです。本にするまで散々読んでいるのもあるし。読み返して「俺、我ながらすごいな」とかそういうのはないですね。今より上手に書けてると凹むじゃないですか。この時はよかったのにって。逆に下手やったら下手で凹むから、ええことないですね。そういえばあんなこと書いたなと反芻する。現物は見ない。やっぱり過去の作品をふまえて書く場合はちゃんと振り返らないといけないのですが、真面目に振り返らずに書いて失敗したり。
最初はめちゃめちゃ緊張されてたファン4人でしたが、「それ、私も聞きたかったやつ!」という質問ばかり。最後に4人の方が森見先生にひと言ずつお伝えして、第二部は和やかに終了しました。
豪華賞品続出!第三部は森見グッズ抽選会
第三部はグッズの抽選会。壇上で森見先生がくじを引き、整理番号が点呼されます。賞品は有頂天家族のふせんにはじまり、狸谷山不動院の数珠、清水焼のぐい呑み、有頂天家族の財布などなど。豪華です。しかも、すべて森見先生のサイン入り!ファンの皆さんのボルテージ上がってました。こういう抽選にはからっきし弱いので半ばあきらめていたんですが、最後のほうで「有頂天家族」の扇子が当たりました!!!
小躍りしながら壇上に向かい、扇子を受け取り、満面の笑みで森見先生とガッチリ握手。こんなことが起ころうとは。この日ずっとニコニコしてましたが、終わってからもずっとニコニコしてました。いや、ニヤニヤだったかもしれない。
最後に、狸谷山不動院より森見先生への感謝状授与。そして森見ファンなら誰でも知ってる(たぶん)有頂天家族の名台詞「面白きことは良きことなり!」を全員で唱和してシメ。いやー、楽しかった。素晴らしいイベントでした。
本日の戦利品一覧
さて、このイベントで手に入れたものを自慢します。
これが抽選で当たった扇子。かわいい!
よくぞこんな所にという場所に森見先生のサインが!
「京都ぎょくろのごえん茶」の玉露ティーバック。コラボパッケージかわいい!当日玉露をいただきましたが、茶葉の甘みが感じられてとても美味しかったです。
寺務所?でもらったパンフレット。なんとこの日、抽選で登壇した方が作られたものでした!境内のいろんなたぬきが見られて楽しい~
たぬきの形の鈴のお守り!超かわいい!事前にこちらを授与していたから扇子が当たったのでしょうか……
イベントの帰りもたぬきの皆さんに見守られながら急な坂道を歩きました。よき一日でした!
この後、一乗寺中谷でランチとおやつ食べたのでその模様もそのうちアップしようと思います。
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